双子の超未熟児 - 出産と育児のブログ

2017年に超未熟児(879g, 1143g)で生まれた一卵性双生児の超未熟児の出産から発育をつづるブログです

大阪でボロい戸建てを購入して民泊・Airbnb仕様にしてみた話

最近のことですが、ちょっと機会がありまして、長屋の物件をフルリフォームして民泊仕様にする仕事をしました。 いろいろ勉強になったので、その話をしてみようと思います。

 

 

 

物件の所在と大方針

物件は、大阪府内にあります。京阪神にアクセスが良く、住宅地としてはそれほど人気がない場所だったので、物件を安く仕込むことが出来ました。

 

大阪府では、建物が所在する用途地域や建物本体が所定の要件を満たし、消防署・保健所の認可を得られれば、民泊営業ができます。大阪は首都圏より不動産価格がだいぶ安いので、やりやすい環境です。

 

建物はものすごい築古(築59年)なのですが、それはそれで、面白いなと思いました。仲介していたのが地場の大手工務店系の仲介業者で、雨漏りやシロアリについては、事前に検査してくれていて問題ありませんでした。

 

大方針として、こんな形で進めることにしました。

  • フルリフォーム
  • 水廻りは変えない(キッチン、トイレ、お風呂)
  • 簡易な耐震補強をする(がっつりはやらない)

 

中途半端なリフォームはしないつもりでしたが、たまたま水廻りが新しく、お金がないこともあり、ここは生かしてコストカットすることにしました。

 

物件購入前の状態

物件を内見した時は、こんな感じでした。
それなりの古さです。

 

▼1F 居間。奥は脱衣所と浴室。

1階居間/施工前


▼1F ダイニング。垂れ壁のせいで狭く見えるので、補強後に取って天井のツラを合わせることに。袖壁も邪魔だが構造上取れない。

1階ダイニング/施工前


▼1F 台所。キッチン台は8年前に取り替えとのことで、古さはありますが、
化粧材だけ変えて生かすことに。

1階台所/施工前


▼2F 寝室1。ここはダブルベッドがぎりぎり2台入る大きさ。

2階寝室1/施工前


▼2F 寝室2(手前)。1Fと同じく垂れ壁が邪魔なので取って、天井を揃える。

2階寝室2/施工前


▼2F 寝室3。

2階寝室3/施工前


▼1F 脱衣場。ここに洗面台を設置して洗面所にする。

1階脱衣場/施工前


やるべきことは、ざっと以下の通りです。

  • 民泊運営業者選び
  • 物件リフォーム
  • 防災工事
  • インテリアデザイン、家具・家電設置
  • 行政認可、近隣対策
  • 資金計画
  • 補助金申請

 


民泊運営業者選び

民泊は一度ブームになったお陰で、周辺業務を受託してくれる業者は山ほどあります。世間に知られるようになって、モグリでやっていた運営者がたたかれやすい環境にあるため、周辺業務の業者は過当競争に陥っており、運営者は選べる立場にあります。

 

初めからいくつか見立てはしていたのですが、今回、この業界では大手に入る会社にお願いすることにしました。ここにお願いした理由は、自社内で物件リフォームとインテリアデザインの請負、近隣対策までしてくれると説明を受けたからです。

別途費用が必要になるとのことでしたが、私が東京在住で、大阪に行く機会が
そんなに無いので、お任せできるところはお任せしようと考えました。

 

通常、民泊運営業者への報酬は、だいたい以下のようなものです。

  • 総売上の20%(総売上 = 宿泊売上 + 清掃売上 - 民泊サイト報酬)
  • 清掃費用(清掃回数 × 清掃実費)

よく見ると、なぜか清掃料金が2度取られていて違和感があるのですが(笑)、これが業界標準です。超ザックリで、だいたい売上の1/3が取られます。

つまり、1ヶ月30万円の売上があれば、20万円が手元に残ります。

 


物件リフォーム

人気物件にするために、まずはリフォームですね。運営業者(以下、運営A)にリフォームのデザインを依頼したところ、「では、提携先をご紹介しますね」との返答。

 

「あれ、、、
   おたくが、やってくれるんじゃないのか?」

 

この運営A、HPは大々的にカッコいいインテリア写真とともに、会社スタッフがドヤ顔で写っていて、自社でリフォームを請負っていそうに見えるのですが、実際のところは民泊周辺業務の受託企業(以下、受託B)に丸投げしてしまいました。

(HPには、確かに自社で請けるとは一言も書いてません)

 

いつもそうしているのか、私の物件でたまたまか分かりませんが、正直、これはヤバいパターンだと思い、自分でリフォーム業者をいくつか見繕うことにしました。

 

私は過去に、個人でリフォームを2度ほどやったことがあるのですが、今回は壊して作っての大がかりなものになる上に、予算が少ないため、これは本気でやろうと合計6社に見積もりを取りました。現地見積りで同じことを6回伝えるたけで、めちゃくちゃ面倒でした。

 

ただ、結果的に、これは良い経験になりました。
リフォーム業者によって、提案のアウトプットが全然違うんですね。

 

・実績の多い大手
提案力が高いが費用も高い。自社でデザイン・仕様決めして施工は下請けに投げる。

・地元の工務店・個人企業の大工
自分で施工するので自社費用が安い。仕上がりの出来は、その人の力量に依存する。

 

前者は、こちらが待ってれば勝手に提案やイメージ写真が出てきます。
後者は、施主がハンドリングしないと、普通のインテリアしか仕上がりません。見積りの上下で、1.8倍ほど違いがありました。

フローリングや壁紙をはじめ、どれくらいの単価が妥当かも、だいたい掴めました。

 

積算にかかる時間だけ各社共通で、現地を見てから見積書が出てくるまで、
1週間~10日もかかりました。なんでそんなにかかるのか、よく分かりませんでしたが、それが標準のようです。

 

最終的には、受託Bに紹介してもらった大工さん(以下、大工E)に発注することにしました。間に受託Bが噛んでいるので少し高いと思いますが、それでも予算内に収まり、大工Eがこちらの要望に柔軟に対応できることが分かったのも決め手でした。

 

対面したときの人柄とか、電気工事や水道工事も自分で出来て、質問に対する回答とか、
「ああした方がいいですよ」
「自分はこう思いますよ」
と、聞いてもないのに指摘があったりで、とても頼りになりました。

単に施主のいうことをハイハイと聞くのではなく、プロ意識をもって自主的にアドバイスをくれる人は、素晴らしいですね。

 

こちらの要望で特に大事だったことは、建具を施主指定にしたことです。
建具について色々調べた結果なのですが、こんな会社にたどり着きました。

サンワカンパニー
https://www.sanwacompany.co.jp/shop/

 

ここって面白くて、いち建具メーカーなのですが、デザイン性と高コスパ、あとはWeb販売にとても力を入れているんですね。東京にはショールームもあったので、実際のものを見に行きました。そして「サンワカンパニーで建てたい」という施主のために、何社も工務店と提携してるんです。

 

普通、立場としては、施工会社が上で、建具メーカーは下なんですね。

だからインテリアの良し悪しは、設計者やデザイナーのセンスに依存しますし、仕入れ原価に対してどれくらい利益が乗ってるか、施主には分かりません。

 

実際、パナソニックとかリクシルのカタログを見て、定価は書いてあるんですけど、楽天でチェックしてみたら、実際の販売価格との差に引きました。
半値八掛けの商品もざらでした。(型番が古いのかも知れませんが)

 

一方で、サンワカンパニーには、自社で客を見つける機能があるので、立場が強いようです。やろうと思えば、サンワの建具だけで部屋を作れます。

施主がWebサイトの写真を見て「インテリアはこんな感じにしたい!」から入って、写真と同じ建具で施工できて、仕入れ原価も分かってるから下手にボラれないですし、とても理想的だと思ったんですね。

 

これは建具業界のトレンドなのかな?と思って他の会社を探してみましたが、他には見当たりませんでした。この流れで、もっと競争が起こって欲しいと思いました。

ここでフローリング、扉、クロゼット、洗面台を仕入れました。発注から納品物の請け取りまで全部、大工Eに柔軟に対応してもらえて楽チンでした。

 

この大工Eですが、話を聞いてみたら、自身が会社の代表でした。
個人でやってる工務店だと思います。

自宅の場所を聞いてびっくりしたのですが、愛媛県から来ていて、今回の施工のために近くの民泊を長期で借りたそうです。

 

非常にコスパの高い施工でしたが、
「そうか~、地方ってやっぱ仕事が少ないんだろうな。。」
と妙に納得してしまいました。


防災工事

防災工事は、非常誘導灯、消火器設置、煙感知器などを取り付けます。最終的に消防の点検を受けて認可を受けなければいけません。

ここは受託Bに紹介してもらった防災屋さん(以下、防災D)にお願いしたのですが、リフォームの見積もりに必死で防災工事の相見積もりを怠り、結果として無駄な費用が出てしまいました。

 

ここは反省点ではありましたが、防災工事は

  • リフォーム業者(大工E)
  • 許認可の手続きを依頼した行政書士
  • 消防署の担当者
  • 防災屋(防災D)

など調整先が多く、こちらの手間を省くために、ある程度致し方ないと思いましたが、次回はもっと上手くできると思いました。

 

今回、1つ想定外のことがありまして、長屋の場合は全ての住戸に防災設備を取り付ける必要があると後で分かり、同じ長屋の隣3件と調整する必要が出てきました。(煙感知器や消化器の設置)

ここは防災Dと行政書士の先生で1軒1軒回ってくれて、上手に調整してくれました。

 

防災設備の工事後に、直接、防災Dの担当者に会う機会があったのですが、
話を聞いたら、この人も社長さんでした。工事やメンテナンスについてコスト面含め詳しく教えてもらえて、この防災Dが受け取っている費用はそれほど高くなく、受託Bが結構マージンを取ってることが分かりました。

ほっほー。

 

ちなみに、行政書士の先生は、許認可の手続きや近隣対策を専門にやっている人で、このへんの業務を全部お願いしました。

民泊周りが出来る行政書士はまだ少ないようで、Webで簡単に探した程度ですが、他に良さそうな人は見つかりませんでした。費用的には少し高かったのですが、フットワークが軽く、人当たりも良く、近隣住民の説明会や物件内覧会まで実施、いろいろと丸くおさめてくれました。

 


インテリアデザイン、家具・家電設置

運営Aは、契約前にはインテリアデザインも出来ると言ってたのですが、依頼をしたところ、個人でフリーランスのインテリアコーディネーター(以下、個人C)を紹介されてしまいました。

この頃には、運営Aには何が出来ないかが分かってきて(というか当初期待していた多くのことが出来ないと分かってきて)、そんなもんかと半ば諦めた前提で進めました。

 

途中、運営A、個人Cと私との3者で、言った言わない、聞いた聞いてないの軽いモメ事があった時には本当に困ってしまったのですが、怒っても仕方がないので、業務を軌道に乗せることを第一に考え、内心「もう2度とお願いしない」と心に誓いながら、こちらで手配を済ませたり人繰りして進めました。

 

個人Cのインテリアセンスはとても良く、割安でかっこいいインテリアを仕上げるための家具リストが手に入ったので、無駄な出費は、このリストを買ったんだと考えるようにしました。。

 

相見積もりをとった別のインテリア業者で安いところもあったのですが、実績のインテリア写真があまりパッとしませんでした。でも次回があるとすれば、この業者にリストを渡して、決めた通りにやってもらったら、上手くできるかな。。(笑)


資金計画

借り入れについては、受ける・受けないは別にして、折角の機会なので勉強しようと思いました。不動産を抵当に入れない前提で、そもそも融資が受けられるかも含めて、打診してみました。

 

・日本政策金融公庫
事業用資金の借り入れとしては最有力です。ここは政府系だけあって、融資の条件が良いです。なのですが、イニシャルコスト(物件取得、リフォーム等)を調達するために打診したにも関わらず、打診が通った後、融資の条件として
「許認可の書面が必要」
という、なんともセンスのない回答が返ってきました。。

許認可は、物件を取得して、リフォームもした後でないと出ないので、結局は資金をつなぐ必要があります。

参考までに、融資の条件は、
・10年返済
・金利は1.85%
・固定金利・無担保
・不動産担保を入れれば、あと0.5%下げられる

という話でした。事業用資金の融資でこの金利は、正直安いなと思いました。今回、結局は自己資金でまかなったのですが、後になって担当から電話が掛かってきて、もう資金需要が無くなった旨を伝えると、

「○○さん(私)のお好きな用途に使って頂いて大丈夫ですよ」
とか言ってきて、
「おい、大丈夫か!公庫!」
と思いました。
融資を受けて株を買ってもいいのかな(笑)


・ノンバンク系
某ノンバンク系の金融機関に打診しましたが、やはり条件は悪くなってしまいますね。
・10年返済
・金利は2.45%
・固定金利・無担保

まぁでも、自己居住用でもないのに、民間企業がこの金利で無担保で貸してくれるって、高くはないなと思いました。

 

・ほか金融機関
その他の融資については、仲介業者に聞いた範囲ですが、地方銀・信金など、
今回の規模の事業だと話に乗ってくれない感じでした。
(実際に窓口まで出向いて話を聞いたわけではありませんが)

アパートやマンション取得の融資なら、金融機関側も美味しいのでしょうが、たかだか築古戸建ての少額需要なんて、やってられないのでしょう。


補助金申請

大阪府には、「特区民泊施設の環境整備促進事業補助金」というものがあります。府が指定したものの整備費用に対して、半額を補助するというものです。
(別途制限がありますが、割愛します)

 

今回の物件では、消防設備の設置コストに補助金をもらえると大きかったのですが、結論としては、対象外になってしまいました。

 

申請期間から、補助金の交付が決まるのが翌月末~翌々月初。それまでの1ヶ月ちょっとの間に、施工の契約をしてしまったら、対象外になるそうです。つまりは、すでに営業を開始しているモグリの施設では補助金を使いやすくて、
営業前から消防設備を入れようとしている施設では使いにくい内容でした。
(補助金を待たず営業開始した方が機会損失にならないし、そもそも応募者多数だと抽選)

 

経済合理性を考えると、モグリで始めて、補助金を受けた方が良いという意味になります。何というか、ここもセンスがないなぁ、、と思いましたが、ダメなものは仕方ないので諦めました。

 

ビフォー・アフター

ということで、以下は施工後、インテリアまで設置した後です。
プロに撮ってもらった写真なので、3割くらい盛られてます。。

 

▼1F リビング。隣戸との間の壁を防音目的でふかしたため、元より狭くなりました。広角レンズのお陰で広く見えることは、ここだけの内緒にしようと思います。

1階リビング1/施工後

1階リビング2/施工後

 

1階リビング3/施工後


▼1F ダイニング。引き戸は吊っていて、床のレールをなくしスッキリしました。

1階ダイニング/施工後


▼1F キッチン。化粧材と壁紙を変えただけですが、綺麗になりました。

1階キッチン/施工後


▼2F 寝室1。

2階寝室1/施工後


▼2F 寝室2。垂れ壁を取って、部屋が明るく広々空間になりました。

2階寝室2/施工後


▼2F 寝室3

2階寝室3/施工後


▼洗面所

洗面所/施工後


▼浴室

浴室


▼トイレ

トイレ

 

最初は分からないこともあって、いくつも問題は出てきましたが、一通りやってみて勉強になりましたし、何だかんだ楽しかったです。

 

次回またやるなら、10%のコスト減・1ヶ月の期間短縮は出来るかなぁ、、、
もっと上手にやれると思いました。